高校情報科の教員になるには

はじめに

高等学校の教科「情報」は、平成15年度からスタートした新しい教科です。とりわけネット社会では、「国語や数学は教えられないが、コンピュータなら教えられるかも」と思う人も多いでしょう。しかし、情報科の教員になることはそう簡単ではありません。このノートでは、情報科の教員になりたい人のために役立つと思われるアドバイスを書いてみたいと思います。

情報教室

 

 

教科「情報」新設の経緯

教科「情報」新設のきっかけとなったのは、平成8年7月の中央教育審議会答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」です。冒頭で述べたように、平成15年度からは情報の授業が開始されましたので、準備期間は6年半しかありませんでした。この短期間で情報科の教員を必要な人数確保するには、大学の教員養成だけでは到底間に合いません。そこで、パソコンに詳しい教員や人数余剰気味の教科の教員に対して、短期間の講習を実施して大量に情報科免許を授与しました。いわば情報教員の「促成栽培」が行われたわけです。
 

教員になるには教員免許が必要です

高校で「情報科」を教えるためには、高等学校教諭免許状(情報)が必要です。この免許は、四年制大学で取ることができます。すでに大学を卒業している場合、通信制大学で教員免許取得に必要な科目のみ学ぶこともできます。
 
高等学校教員(情報)の免許資格を取得することのできる大学
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoin/daigaku/detail/1287078.htm

 

 

高等学校「情報科」教員の採用状況

現在のところ、情報科教員の採用状況は非常に厳しいといわざるを得ません。

募集している自治体が少ない

時事通信出版局の採用試験データベースによれば、情報科の教員を募集している自治体は全国で15しかありません(2010年)。また、募集はしているものの高校他教科の教員免許を持っていることを出願条件にしているケースも多く、情報科免許だけで受験できる自治体はわずかしかありません。

採用数が少ない

東京アカデミーがまとめた教員採用試験結果によれば、平成24年度試験(2011年夏実施)で情報科教員として最終合格した人は全国で67名に過ぎません。これは私個人の印象ですが、情報科の教員は他教科に比べ平均年齢が低く、定年間近の人は少ないと感じます。教員の採用は基本的に欠員補充ですから、退職する人が少なければ、当然採用も少なくなります。ただ、今のところ志願者数もそれほど多くなく、合格者68名に対する受験者数は616名、競争倍率は9.1倍でした。全教科の平均競争倍率が7.7倍(平成23年度文科省調べ)ですから、他教科と比べて極端に倍率が高いわけではありません。公立学校教員採用選考 高校教科別競争率

 
また、情報科は必修科目とは言え、高校3年間で2単位しか必要ないため、そもそも情報科教員の需要自体が少ないのです。小規模な高校では情報免許を持った教諭を置かず、非常勤講師(正規雇用でない時間給の教員)で間に合わせているケースも多く見られます。

 

他教科での採用を狙う志望者も・・・

情報科での教員採用は非常に厳しいので、情報科教員志望者の中には他教科の免許を追加取得し、その教科で受験する人も多いようです。お勧めは採用数が多くて比較的倍率の低い数学、理科、次いで国語、英語あたりでしょう。逆に地歴、公民や保健体育は倍率が高いので、よほど自信があるのでなければ避けたほうが良いでしょう。

 

高等学校「情報科」の実情

先に述べたとおり、情報科教員の多くが「促成栽培」であるため、情報科の授業内容は必ずしも充実していないのが実情です。生徒たちがよく情報科のことを「パソコンの授業」と呼ぶことは、パソコンに操作の習熟に終始している情報科授業の実態をよくあらわしています。しかし、そうした授業で得られる知識技能は、OSの進化やアプリケーションソフトのバージョンアップによって、あっという間に使い物にならなくなります。本当に必要なのは、「情報化の進展に主体的に対応できる能力と態度」を育てることであり、パソコンの操作はそのための手段ではあっても目的ではありません。

ただパソコンに詳しいだけでなく、大学で体系的に情報について学び、生徒に情報化社会で生きていく能力を育てられる人が教育現場に必要だと私は考えます。高等学校情報科教員の採用は大変狭き門ですが、ぜひ難関を突破できるよう頑張ってください。
 

【コラム】情報科教員は「パソコンの便利屋さん」!?

  • 情報科教員は情報機器やネットワークに詳しいことが多いため、校内ネットワークやサーバ、情報機器の管理者を任されがちです。また、職員室でも「パソコンの操作に困ったら情報科の先生に聞け」が半ば常識となっているケースが多々あります。ベテラン教員になれば「私に面倒なことを聞くな!オーラ」を出して、パソコン関係の質問から逃げることも可能かもしれませんが、若手のうちは二つ返事で引き受けるしかないでしょう。まして、分掌の仕事であれば是非もありません。それも情報科教員の宿命なのかもしれません。どうせなら、笑顔で「便利屋さん」の務めを果たしたいものです。