学校の先生になるには~(1)教員免許取得から教員採用試験まで

はじめに 教員採用 教採 教員免許 教育職員免許 教職免許 教育実習員免許教職

このノートでは、「学校の先生になりたい」と考えている人、とくに中学生・高校生のために、高校や大学(学部学科)の選び方、教員になるのに必要な「教員免許」の種類、教員採用試験の内容などについて、なるべく分かりやすく書いていきたいと思います。教室

 

教員免許とは

幼稚園、小学校、中学校、高等学校の教員になるには教員免許が必要です。教員免許は学校の種類ごとに分かれています。先生になりたい学校の種類に応じた教員免許を持っていなければいけません。小学校の先生になるには「小学校教諭免許状(これが正式名称)」が必要です。

中学校と高校の教員免許は教科別になっています。教科とは国語、社会(高校では地理歴史、公民)、数学、理科、英語などです。よく「世界史の教員免許が欲しいのですが」といった質問がありますが、世界史を教えるには高校地理歴史科の免許が必要です。逆に言えば、高校地理歴史科の免許を持っていれば地歴科の全科目を担当できますし、また全科目を教えられないといけません。中学校免許と高校免許は、免許を取るために必要な大学の授業がほとんど同じなので、両方同時に取る人が多いです。

特別支援学校(以前の養護学校、盲学校、聾学校、病弱・肢体不自由児学校など)の先生になるには幼稚園、小学校、中学校、高等学校いずれかの教員免許に加えて、特別支援学校教諭免許状が必要です。ただし、一部の都府県市では、特別支援学校教諭免許状を持っていなくても特別支援学校の教員採用試験を受けることができます。

「保健室の先生」と呼ばれる養護教諭になるには養護教諭免許状が、給食の献立を考えたり食に関する指導を行ったりする栄養教諭になるには栄養教諭免許状が、それぞれ必要です。
 

教員になるための高校・大学選び

「どのような高校に進学したら良いですか?」

教員免許は大学で取るのが一般的です(※)。ですから、ある程度の進学実績がある高校を選ぶべきです。東大合格者を多数出すような高校の出身者だからといって、教員採用試験で有利になることは全くありませんが、優秀なライバルと刺激しあって勉強に励むことは、必ず後々プラスになります。したがって、なるべく進学実績優秀な高校に入ることを目指してください。

※高校教員免許以外は、短期大学や専門学校でも取得可能な場合があります。

「どのような大学に進学したら良いですか?」

さて、ここからがよく考えないといけないところです。取得可能な教員免許の種類は、大学(学部・学科)ごとに決まっています。小学校免許が取れない大学へ入っておいて「僕はどうしても小学校の先生になりたい」といっても手遅れです。自分は何の先生(学校種・教科)になりたいのかを明確にし、それに相当する教員免許が取得可能な大学を選ばないといけません。

小学校教員希望の場合
小学校教員希望でしたら、国立大学の教員養成系学部へ行くのが最善の方法です。教員採用試験でも教員養成大学・学部出身者の合格率は、他学部の出身者に比べて約9ポイント高いという調査結果があります。「残念ながら国立には手が届きそうにない」という人は、小学校教員免許が取得可能な私立大学・短大の中から自分にあった大学を探すことになります。中学校・高校教員免許に比べ、小学校教員免許が取れる大学・短大の数はそう多くありません。

【リンク】小学校教員の免許資格を取得することのできる大学(文科省)

中学校・高等学校教員希望の場合
中学校・高校の教員免許が取得できる大学は数多くあります。国立大学の教員養成系学部はもちろん、文学部、経済学部から薬学部、理学部にいたるまで、実に様々な学部学科で教員免許を取ることができます。

ここで多くの高校生を悩ませるのが、教育学部(教育大学)と一般の学部、どちらに進学すべきかという問題です。

教育学部では、教員に求められる資質・能力を育成することを重視したカリキュラムになります。教育学部の教員は小・中学校や高校の教員経験者も多く、教育現場をより身近に感じながら学ぶことが出来ます。もちろん教科に関する内容も学びますが、一般の学部に比べると専門的な内容を深く学ぶ機会は少ないようです。その代わり、教育学部では教員免許を取るための科目の多くが卒業に必要な科目として認められますので、比較的少ない負担で教員免許を取得可能です。ただし、教員志望をやめて一般企業への就職を目指す場合、教育学部出身者は不利だとも言われます。なお、旧帝大の教育学部は教育学を学ぶところであって、教員養成を主たる目的としていません。そのため、次に述べる「一般の学部」のひとつとして捉える必要があります。
 
 一般の学部では、専門的な内容を深く学ぶことが可能です。たとえば日本史を学びたい場合、文学部史学科国史学専攻に入学すれば、興味のある時代、地域、人物などに焦点を絞り、知られざる歴史を明らかにしていくことも可能です。しかしながら、一般の学部では教員免許取得に必要な科目の大半が卒業に必要な科目としては認められないため、教員免許を取らない人よりも多くの授業に出る必要があります。したがって、教育学部に比べて教員免許取得の負担が大きいと言えます。

こう書くと、「やっぱり普通の学部のほうが良さそうだ」と思う人も多いかもしれません。確かに、大学での学びを充実させようと思えば、一般学部に分があります。しかし、次のようなデータもあるのです。

平成23年度公立学校教員採用試験 学歴別採用者率

  • 学歴別の採用率は以下のとおりとなっており、教員養成大学・学部出身者が他の出身者に比べて高い率で採用されている。
     

    •教員養成大学・学部出身者  25.9%
    •大学院出身者            17.6%
    •一般大学出身者          13.4%
    •短期大学等出身者          8.2%

    ※採用者率=採用者数÷受験者数×100(%)
    文部科学省サイトより引用)

上記のデータでは、一般大学出身者に比べ、教員養成大学・学部出身者の教員採用試験合格率が12ポイント上回っていることが分かります。

教員志望者が大多数を占める教育学部では周囲に「ライバル」が大勢いますから、自然と教員採用試験に向けて試験勉強をしようという雰囲気になります。OB・OGに教員が多いので、採用試験の情報も入りやすいです。そもそも学部の目的が教員を養成することにありますから、大学側でも学生の教員採用試験合格に向けたサポートは他のどの学部よりも充実しています。そうした環境が、上記データの差になって現れるのでしょう。

ただ、合格率はあくまで全体の平均値でしかありません。試験の合否は個人の努力の結果です。たとえ短期大学出身でも上位8%に入れば合格できるのです。

【リンク】教員免許状を取得できる大学(文科省)
 

「大学院にいったら有利になりますか?」

少なくとも先の文部科学省の調査は、一般大学出身者よりも大学院出身者のほうが有利であることを示しています。しかし、ちょっと待ってください。大学院出身者は大学出身者よりも2年余計に勉強しています。学費も2年分余計に使っています。2年の歳月と数百万円の学費を費やして、合格率が4ポイントほどしか上がらないのでは、あまり効率のよい方法とは言えませんよね。生涯収入が2年分(※)減ることもお忘れなく。

※大学院出身者の初任給は、大学卒業後に教員として2年勤務した人の給与とほぼ同額になります。したがって、この「2年分」は大卒後2年分の年収です。

大学院は、大学での4年間の勉強をさらに掘り下げて、深く詳しく学びたい人が行くところです。自分が選んだテーマ(研究課題)を狭く深く学びますので、教員採用試験で求められるような広範な知識は得られません。したがって教員採用試験で有利になりたいからといって大学院に行くのはまったく大間違いです。教員採用試験に合格したいなら、素直に教員採用試験の勉強をするのが合格への最短ルートです。

大学では何を学ぶの?

 教員免許状取得に必要な科目

 大学では、卒業に必要な授業のほかに、教員免許状取得のための授業科目も多く取らなければいけません。必要な科目は大きく3つのグループに分けることができます。

1.教育職員免許法施行規則第66条の6に定められた科目
   日本国憲法、体育、外国語コミュニケーション、情報機器の操作
2.教職に関する科目
   教職入門、教育史、教育心理学、教育社会学、教育実習 etc.
3.教科に関する科目
   教員として教える教科の専門的内容。小学校の場合は9教科。
 
※科目名は大学によって異なります。
 
「2」は、教員採用試験で出題される「教職教養試験」の内容とほぼ同じです。のちのち教員採用試験でも役立つようにしっかり勉強したいものです。
 

教育実習・介護等体験

教育実習は一般に3年次または4年次に行います。4年次前期に行う場合、就職活動のヤマ場と重なりますので、一般企業への就職も考えている人は注意してください。期間は3~4週間(高校免許のみの場合は2週間)です。

介護等体験は、小・中学校の教員免許を取る際に必要です。社会福祉施設で5日間、特別支援学校で2日間、計7日間で実施されるのが一般的です。

 
※このノートの続編「学校の先生になるには~(2)教員採用試験編」もあわせてご覧ください。


  

ご質問・アドバイスをお寄せください。

  • このノートについて分からないことや、もっと詳しく知りたいことがあれば、Yahoo!知恵袋へお寄せください。
  • 不適切・不十分な記述があれば、お問い合わせフォームにてお知らせいただければ幸いです。多くの方のアドバイスをいただいて、このノートを教員志望者にとって有益なものにできればと考えています。

 

リンク・引用について

  • 本ノートへのリンクや回答内での紹介はご自由に行っていただいて構いません。事後でも結構ですので、アドバイス機能を通じてご連絡いただければ幸いです。