学校の先生になるには~(2)教員採用試験編

はじめに

このノートでは、「学校の先生になりたい」と考えている人、とくに中学生・高校生のために、高校や大学(学部学科)の選び方、教員になるのに必要な「教員免許」の種類、教員採用試験の内容などについて、なるべく分かりやすく書いていきたいと思います。

※このノートは「学校の先生になるには~(1)高校選びから教員免許取得まで」の続きです

 

教員採用試験について

たとえば医師免許やパイロットの免許なら、免許さえ取れれば、医師やパイロットへの道は約束されたようなものです。贅沢を言わなければ仕事に困ることはありません。

ところが、教員免許は全く違います。教員免許を取ることは、それほど難しくありません。大学を卒業できる学力があり、真面目に勉強さえすれば、教員免許は誰でも取れます。実際に教員になるには教員採用試験に合格しなければなりません。そして、本当に難しいのは教員採用試験に合格することなのです。次のデータを見てください(筆者作成)。公立学校教員採用選考 小学校競争率

これはあくまで全国平均で、たとえば青森県小学校採用の倍率は24.2倍(H.23)なのに対し、千葉県・千葉市小学校採用の倍率は2.5倍(H.23)に過ぎません。同じ小学校教員を目指すにしても、地域によって倍率に大きな開きがあります。

また、中学校・高等学校の教員は教科別の採用になりますので、倍率も教科によって異なります。一般的に倍率が高いのは社会(地歴・公民)、保健体育、芸術(音楽・美術・書道)などです。国語、英語なども比較的倍率が高い傾向にあります。逆に倍率が低いのは理科、数学、技術などです。ただし、学校種や教科ごとの倍率は自治体によって大きく変わりますし、同じ自治体でも年度によって変動します。中高の教科別競争率の全国平均値は次のとおりです(筆者作成)。 

公立学校教員採用選考 中学校教科別競争率

公立学校教員採用選考 高校教科別競争率

 

公立学校か、私立学校か?

公立学校(都道府県立学校および市町村立学校)の先生になりたい場合、都道府県や政令市が毎年夏から秋にかけて実施する教員採用試験を受験します。試験に合格すれば、翌年の4月から先生として働くことができます。
    
私立学校の先生になりたい場合。採用試験は各学校が独自に行います(※)。公立の場合と違い、試験に合格後、最初の数年は期限付きで採用され、働きぶりが良ければ正規採用となるのが一般的です。
   

注意

  • 群馬、東京、静岡、愛知、兵庫、広島、福岡、長崎の各都県では、私立学校協会が教員志望者を対象とする適性検査(有料)を実施しており、各私立学校が検査の成績を参考にして採用する仕組みをとっています。

       

教員採用試験って、どんな試験?

教員採用試験の内容を大まかに書き出すと次のようになります。

・一般教養(中学校~高校1年程度の5教科の内容+α)
・教職教養(教育制度や教育史など、大学の「教職に関する科目」で学ぶ内容)
・専門教養(教員になった時に教える内容。小学校なら5教科or9教科、中高なら担当教科)
・面接・集団討論・模擬授業などの人物試験
・小論文、実技(小学校、中高一部教科など)、適性検査

一般教養は配点ウェイトが低いわりに範囲が広いので、試験直前に対策しようと思っても不可能です。中学生・高校生の皆さんにとっては、いま学校で習っている内容をしっかりマスターしておくことが最善の対策です。教職教養は大学に入ってから習う内容ですので、いまは気にする必要はありません。強いて言えば、高校の現代社会や倫理の教科書に出てくる著名な哲学者については、少し真剣に勉強しておくと良いでしょう。専門教養は、担当する教科の内容を問われます。小学校の場合5教科または9教科で、内容・レベルはやや難関校の高校入試くらいといったところでしょう。中学校・高校の場合は大学入試レベルの問題が出題されます。国語、数学、英語などは全ての受検者が同じ問題を答えますが、社会(地理歴史・公民)や理科は、共通問題+選択問題という形式をとるケースもあります。
 
公立学校教員採用試験では、上記の内容のほぼすべてを2~5日程度かけて実施しますが、私立学校の採用試験では教職教養や小論文を実施しない学校も多いようです。
  
近年は、面接集団討論模擬授業などの人物試験が重視される傾向にあります。教員になりたいからといって塾に通い詰めて勉強ばかりしているのではなく、学校行事や部活動にも積極的に参加し、多くの人と接する中で人間的魅力を高めておいて欲しいと思います。
 

教員採用試験の準備はいつ始めたらいい?

教員採用試験は、大学4年生の夏から受けることができます。準備期間がどれくらい必要かについては、校種や教科にもよりますし、その人の能力にもよるので一概には言えません。ただ、遅くても大学2年の秋には準備を始めましょう。

まずは、受験予定自治体の過去問を入手して1年分を解いてみましょう。過去問は多くの場合、都道府県(市)の情報公開窓口などで、閲覧・コピーが可能です。また、協同出版から「過去問シリーズ」として自治体別・校種教科別の過去問集が刊行されています(毎年10月頃に最新版が出ます)。教員採用試験は、自治体ごとに出題範囲や問題形式に違いがありますので、過去問で自分が受検する自治体の内容や形式をしっかり把握した上で、参考書や問題集で必要な部分だけ勉強していくのが効率的です。

大学3年の春には、来年の本番に備えて教員採用試験の模擬試験を受けてみると良いでしょう。模擬試験は東京アカデミー時事通信出版局が4~6月ごろに実施しています。受験予定の自治体や校種・教科を記入すれば、合否判定もしてくれます。3年生ならC判定が取れれば上出来です。4年生であればB判定以上を目指しましょう。

面接や集団討論に自信がない人は、東京アカデミー河合塾KALSなどが開講している人物試験対策講座を受講する方法もあります。授業料は30~50万円と安くはありませんが、それで合格できるのなら安いのかもしれません。
 

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